すこやか通信vol.04

姫路の出産の現場を守り抜く不育症治療費等を助成する「未来のママ・パパ応援事業」、出産を控えた妊婦さんだけでなくパートナーも一緒にPCR検査を行い、安心•安全な出産・育児につなげるとともに、新生児への感染リスクを最小限に抑える「新型コロナウイルス感染症から姫路の未来を守るプロジェクト」といった新しい施策を打ち出し、少子化対策に果敢に挑だ戦する清元秀泰市長。今回の「すこやか姫路」では、このコロナ禍の時代に今、未来に向けて何をやっていくべきかをお二人のゲストをお迎えしてお聞きしました。

姫路の出産の現場を守り抜く

清元市長
まず中林産婦人科クリニック院長の中林幸士先生にお聞きします。産婦人科の先生方は休日も夜間も関係なく、日々本当に大変な思いで診療されていることと思います。中林先生のクリニックでは、年間何人くらいの分娩を担当されているのでしょうか?
中林先生
近年徐々に増えてきまして、約800人のお産を預からせていただいています。
清元市長
姫路市の出生数が年間約4500人。年々出生数が減っている中で、相当な数の分娩を担当していらっしゃいますね。そのような中でも専門医として生殖医療にも取り組んでいらっしゃいます。不妊治療は年間、何件くらいありますでしょうか?
中林先生
体外受精や顕微授精などの高度生殖医療の件数で言いますと年間約15OS200例くらい、移植を含めるとその倍くらいになります。外来は産科と不妊治療を合わせて1日100人くらい。多い日で140人くらいの患者さんが来られまして、そのうち約半数が不妊治療の患者さんです。
清元市長
中林先生からは、今年3月に「姫路の子どもたちの生まれる現場が、コロナで大変な事態になっている」とご連絡をいただきました。その時の状況をお聞かせください。
中林先生
ちょうどコロナの市中感染者数が増えてきた時期で、妊婦さんが感染すると重症化する可能性があると報道されたり、赤ちゃんにも影響があるかもしれないという海外からの情報があったり。日本中が全く手探りの状態の中で、私たちが何とか姫路の産婦人科医療を維持しないといけないという使命感のような思いで日々の診療にあたっていたんですね。そして実際に現場は非常に困っていまして。そこで、どのような対策を講じたらいいのかを内科医でもある清元市長に相談させてもらったということです。
清元市長
突然起きたコロナ禍で、姫路市内でも病院でクラスターが発生する事例がありましたし、それに伴う風評被害も非常に大きかった。私が中林先生の話を聞いて心が痛んだのは、妊娠、出産が不安だという妊婦さんの声でした。人との接触を避けるため、本来なら一緒にいて励ましてくれる最愛のパートナーでさえ分娩、出産という人生の大きな門出に立ち会えない。これは大きな問題だと感じたわけです。そこで姫路市独自で考えたのが「姫路の未来を守るプロジェクト」でした。ただ検体採取時に、鼻の奥に綿棒を入れてクシャミが出た時に飛沫が飛びますから、採取が難しい。最終的に中林先生のご意見どおり唾液からとることになりました。妊婦さんとパートナーのPCR検査を臨月直前に行うことは、実際の現場ではどんな反響があったのでしょうか?
中林先生
それはもう「市長さん、本当にありがとうございます」と。決断後の対応も驚くほど早く、行政のトップが先頭に立って進めてくださったのがよかったと思います。患者さんも子どもを守るためには、いろいろと対策を講じないといけないことを理解されていますので、私の病院の妊婦さんは皆さん同意されて、ぜひ検査を受けたいとおっしゃっています。
清元市長
それはうれしいですね。9月までにすでに約2300件のPCR検査を行いましたが、どの妊婦さんも日頃からコロナ感染しないよう、気をつけられている様子で、一人としてこのプロジェクトから陽性者が出ていません。妊婦さんに限らず、阪神間に比べて姫路市内の市中感染率が低いのは、例えば手を洗いましょうとか、マスクをしましょうとか、3密を避けましょうとか、それを守る市民一人ひとりのみなさんの意識の高さによるものだと思っています。

心の健やかな成長を早期支援

清元市長
次は、高岡病院の中島玲先生にお聞きします。お子さんが生まれて健やかに成長するには、親御さんだけではなく、例えば保育園、こども園、小学校、中学校というように成長に沿った形で地域の関わりが必要だと。中島先生は今年6月、20歳未満の子どもを対象としたさまざまな精神疾患の治療に対応する児童思春期病棟「OHANA」を高岡病院内に立ち上げられました。また、長期入院されているお子さんたちは、学校に通えず勉強が遅れがちです。そこで、教職員が在中して小中学生は院内の教室で授業が受けられる、精神科では非常に珍しい「U—Uの木」を開設されました。私は、子どもが生まれる前から、さらに生まれてから成長して大人になるまでの期間が少子化対策として非常に重要だと思っています。中島先生の思いをお聞かせください。
中島先生
私たち児童精神科医はクリニックで診療しているのですが、日々いろんな悩みを抱えたお子さんが受診されています。それこそ産婦人科や小児科の先生方が出産からその後の新生児のフォローまで、大切に診てくださったお子さんたちを、身体面は小児科の先生が継続してしっかりと診ていかれるわけですが、心が健やかに成長するようサポートしていく部分が私たちの職務だと思っています。 クリニックの受診だけではなかなか快方に向かわないお子さんたちもおられますので、なるべく早期に子どもたちに関わってあげたいという思いから、「OHANA」を立ち上げさせていただきました。「OHANA」はハワイ語で「家族」のこと、またそうした家族的絆を支える精神を意味しています。今までは、入院が必要なお子さんは一般病棟でお預かりしていました。入院生活ではスタッフがチームとなリ、子どもに寄り添い、こころのケアを大切に、より良い成長につながるよう治療や日常生活をサポートしています。また入院によって学校教育が遅れることは、子どもたちにとって大きな痛手と考ス、清元市長のご協力のもと「UーUの木」を開設させていただいたわけです。教職員が常駐しますので、子どもたちは授業の遅れを取り戻したり、本人のペースで学習を積み上げたりと頑張っています。特に今はコロナ禍のために、病棟内で家族の面会ができない状態です。お母さん方もとてもfJ心配されている中でお預かりしておりますので、今まで以上に家族的に支えるという部分を特に大事にしながら治療体制をとっております。
清元市長
長期入院の子どもに学校教育を提供するのは教育委員会との調整が必要でした。書写養護学校の分教室という形で協議がまとまり、無事開設できたのは本当によかったと思います。
中島先生
あリがとうございます。他の都市の院内学級では、先生が常駐するのがなかなか困難だと聞いていますので、とても助かっています。
清元市長
精神科の中に児童思春期病棟という特殊な部門を作ったのも播磨では初めてですね。全国でも少ないんじゃないですか?
中島先生
少ないですね。兵庫県でも2カ所目です。
清元市長
近年、発達障害児が増えていて悩んでおられる親御さんがたくさんいらっしゃると聞きました。実際にどのくらい増えてきているのでしょうか?
中島先生
国のデータでは100人に1人と言われています。ただ、1歳半健診などでしっかリピックアップすると、健診率が高い地域では3.6%とか5%になったりするケースもあります。
清元市長
逆に言えば、1歳半健診、3歳児健診でもう少し正確にピックアップして、発達障害のある子どもさんを早期にしつかりと支援していかなければいけませんね。
中島先生
早期のピックアップ体制を確立して、もし発達障害などのお子さんがいらっしゃればできるだけ早く介入する。早期支援に重きをおくことが子どもさんにとっても親御さんにとっても一番大事だと思います。
清元市長
その最初の段階を担うのは小児科医ですね。私も健診を担当したことがありますが、どうしてもADHD(注意欠陥多動性障害)とかLD(学習障害)などは分からないままになってしまいがちです。小学校入学前に気がついても受け入れる場がないんですね。実際、行政も支援学級や通級学級を整備してはいますが、中島先生のご意見としては、症状が進んでからそこに通うよりも、もっと早い段階で専門医が介入できれば、そのようなお子さんが健やかに成長できるのではないかということですね。
中島先生
小児科の先生方は本当にお忙しいんです。姫路では児童精神科医が健診に参加して発達障害をチHックする体制がまだできていませんので、その辺りを私たちがお力添えできれば、もう少し発達障害が早期にピックアップされて、小学校、中学校と上がって社会へとつながる時に、それぞれの能力や特性に応じたよい力が発揮していけるのではないかなと思っています。

精神科医と産婦人科医の連携

清元市長
話は変わりますが、近年、産後うつはどのような傾向ですか?
中林先生
問題になってきています。子どもに対して強くあたってしまうとか、上手く育てられないということもあリます。私たちとしては、そういうお母さんをできるだけ支援するため、おかしいと思ったら助産師が一人ひとりにしっかり話を聞いて、姫路市の保健所につないでいます。保健所と精神科の連携をもう少し密にしていく必要もありそうですね。また、私たちが精神科疾患を合併している妊婦さんを診られないという点も大きな問題です。今度新しくできる県立病院に精神科はありますか?
清元市長
精神科はあります。ただ率直に申し上げると、平均在院日数を10日前後にするような3次救急病院での精神科のあり方は、おそらく派遣元の神戸大学でも考えられていると思いますが、それは急性適応障害だったり何か特化した形での診療になると思います。長期間加療が必要な統合失調症やうつなどもあるとは思いますが、「入院は連携している病院でお願いします」という形になるのではないかと推察 お二人は、1次救急、2次救急*ーを主に担当されていると思うのですが、例えば菫度の胎児の発育障害だったり、妊婦の容態で緊急手術が必要な時に対応できる病院にもう少し幅があってもいいはずですね。私は姫路市民の命を預かっていると常に心に留めています。播磨の連携中枢都市圏のトップとして100万人以上の命をしっかりと診る体制をつくることが自分の政治的目標でもありますので、精神科医と産婦人科医の連携は重要だと考えます。
中島先生
一般の精神科医は産後うつについては大体認知しています。ただ、先ほど中林先生のお話で、保健所と産婦人科医と精神科医の連携が上手くいっていないということは、やはりその通りだと。お母さん方も産後うつになると、いろんな感情が出てきてどんどん辛くなってしまうので、その辺りを連携しながらフォローしていくのは非常に大事だと思っています。
中林先生
今、産婦人科医は保健師さんに繋いでいる形で、そこから先がどのようになっているかという所ですよね。私の病院では1歳児くらいまでのお母さんを集めてベビーヨガとかベビーマッサージといった触れ合いの場を設けてフォローするような体制を心掛けて頑張ってきたのですが、今はコロナ禍のためzoomで実施するなど努力をしています。
中島先生
精神科の病院に、赤ちゃんを抱っこして受診することはなかなか難しいかなと思います。薬の処方が必要な場合は来院が必要ですが、その前の段階までに何とかフォローしていくことを考xるのであれば、私たち精神科医が産婦人科、保健所に対してのレクチャーなども検討できるのではないのでしょうか。 あと、新県立病院の精神科は短期間のせん妄や一過性の精神症状を対応するのかなと思います。私たちの病院ではスーパー救急という病棟も運営していまして、2次救急、3次救急レベルの精神疾患を扱っていますので、新県立病院とはいろいろと連携させていただきたいなと思っています。

少子化対策は思春期教育から

清元市長
折しも菅新首相が「縦割り行政を解消していきたい」と。私もこれは痛切に感じています。例えば、子どもを見守り、健やかに育てるなら、母子保健や婚活くらいから行政が関与する必要があります。婚活は産業局、分娩や出産、医療は健康福祉局、待機児童は子ども未来局、小学校に上がれば教育委員会、という具合に。私は医師でしたから、産婦人科医や精神科医の頑張りも分かるし、小児科の思いやリも分かります。 令和の時代のアフターコロナでは、縦割りを排除して―つのことをしっかりと守っていく。そういった意見の言える政策をとる必要があると感じています。 今、新県立病院の東側に少子化対策を兼ねた(仮称)母子健康支援センターの建設を予定しています。保健所の機能である健診という形でお二人の領域を繋いでいけると思います。そして健診以外に思春期の悩み相談も含めてやっていきたい。 これは少子化対策の要だと考えているのですが、子どもを生んでもらうために保育園やこども園を充実したり、給食を無料にするよりも、人生設計を中高生くらいの若者たちにも考えるフェーズが必要なのかなと。親御さんの中には、性教育は必要ないと言われる方もあるかもしれませんが、例えば不妊の大きな原因の1つにクラミジア感染症による卵管閉塞があります。「子孫を残していく自分の体をもっと大事にしましょうね」と、中高生になれば男子も女子もジェンダーフリーの中で考えていく。そのためのセンターを作っていきたいというのが次の政策の1つなんです。姫路市では近々、他市町に先駆けて2.mータレットを小中学生全員に配備する予定です。その中では単なる読み書きや語学を覚えるだけでなく、道徳や性教育とか「あなたも社会の一員なんですよ」ということを教育したい。成人を18歳に引き下げる検討がされていますが、むしろこのようなことをきちんと学ぶ環境ができていないのに、いきなり成人にしてしまうリスクについても考慮しなければ。全く縦割りでできていないように思います。
中島先生
その通りだと思います。少子化対策の中にしっかりとその子たちに何が必要であるか何を学んで行くべきかと周囲の大人がきちんと方向性を示し、そこに乗っかって力を付けていくということがまず大事です。
清元市長
もう1つは子宮頸がんワクチンの接種率がOECD加盟国*2最下位とうことです。これはワクチンの危険性が取りざたされています。新型コロナ感染症のワクチンなら誰もが打ちたいのに、子宮頸がんワクチンはいろいろな身体的不調が出ると。これも調べてみると、ワクチンの副作用で神経髄鞘反応がでるのではなく、思春期特有の悩みとか家庭環境が多分に影響して身体的不調がでる可能性がありそうなんです。こういったことを科学的に検証するとともに、産婦人科医と精神科医がしっかりと連携して、未来のお母さんを支援してほしい。子宮頸がんワクチンに対する啓発活動も含めて、少子化対策の一環として(仮称)母子健康支援センターを運営していきたいと思っています。お二人は、姫路の医療の未来を担っていくリーダーになられる方と思いますので、この施策に対してぜひご協力をお願いします。 最後にお二人から市に対しての要望、また姫路の医療の問題点があれば率直にお聞かせください。
中林先生
まず不妊対策では最善を尽くしていただいてありがとうございます。所得の上限撤廃については皆さん喜ばれています。ただ、まだ制度を知らない人もいるので、もう少し広報で伝えてあげてほしいですね。次に産後うつの尺度になっているブ「エジンバラスコア*3」という健康調査姫路でも採用していただきたい。 もう1点あります。不妊治療をなかなか職場で言い出せない方が多いですよね。行政には、お産の時だけ、赤ちゃんを身籠っている時だけというのではなく、不妊治療から産まれるまでを一括りとして考えた職場づくりを提唱してほしいなと。できれば姫路市役所が率先して職員さん向けに体制づくりをして発信していただきたいと思います。
中島先生
私からも2点お願いしたいことがあリます。まず、コロナ禍で保健所の業務は大変だと思いますので、厚労省が発達障害のスクリーニングに有効だと認めているM|CHAT*4を導入していただくありがたいと思います。 もう1つは思春期前の早期介入への支援です。思春期のフォロー体制を強化するという話は保健所から聞いているのですが、思春期に受診されているお子さんの6、7割は発達障害が占めています。ベースに発達障害があっていろいろな問題が起こっているのですね。思春期前のなるべく早い段階での体制を強化していただけると非常にありがたいなと思っています。
清元市長
今回、お二人に来ていただき本当に貴重な話を伺うことができました。このように現場からの問題提供をいただくのが一番ありがたいことです。時間はかかったとしても、しっかりと実現できるように頑張ってまいります。この対談を通じて市民の皆さんが清元市政に興味を持ち、今後に期待を寄せてくだされば幸いです。本日はありがとうございました。

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